俺妹黒猫if下巻、ざっと読み感想その2(ネタバレ無配慮)

まずは勝手に宣伝、2021年3月10日発売、電撃文庫俺の妹がこんなに可愛いわけがない(16)黒猫if下」、描きおろしの黒猫ルート堂々完結です。みんな読んでね。

 

伏見先生インタビュー、なぜかちょっと見ちゃうのが怖いというか見ていない状態の気持ちを保存しておきたいので、もう一回だけ感想とか想念を煮詰めておきますよ。

 改行よいしょっと。

 

 

 

 

黒猫if下巻が出る前、予告された「繰り返される運命の夜」ってなんだろうという話がありまして、まあ夜会うのは8月末の千葉みなと(アニメなら幕張海岸)花火大会の「先輩と別れる」と12月20日の松戸五更邸まえがあるだろうけれど、8月があって12月があるので、後知恵ではそれは8月末で確定でした。

正直、下巻を読む前は「先輩と別れる」なんてやってほしくない、黒猫にはずっと幸せでいてもらればいい、と思っていたのだけれど、ifとはいえ伏見先生ご本人の俺妹の看板で出すからには、そこは逃げられない、逃げちゃだめだ、と思って、次の瞬間そこからの鮮やかな脱出法をみて文句なしのパーフェクトゲームだとおもったんですよね。

推理小説みたいに猜疑的に読んでいたらもっと前に気づいただろうけれど、これそういう楽しみ方をするもんじゃないから)

リアルタイムでなく後から一気に読んだせいかもしれないけれど、俺妹本線の桐乃ルート(10~12巻くらいかな)は、ギリシャ悲劇みたいだと思うんですよ。結末が悲しいという意味ではないし、もちろん24時間ルールなんかあてはまらないけれど、誰も邪悪じゃない、どっちかというと善良な性格をもった登場人物がこの経緯で出会ってしまったら、みんな良かれと思って動くのだけれど、こういうところに落ちていかざるを得ないというものを見る気がするわけですね。

倫理的に悩ましいだけに、周到にそうならざるを得ないように構成されているからこそ、(黒猫派のみんなごめん!)桐乃の想いと結末に納得する人がいるわけです。で、そのへんぶっちぎっていくのもありだけど、その本線の色々をまるっと引き継いで、なお黒猫に幸せになってもらうという難題を、黒猫ifは完璧に解いてくれたんだと思うんですね。

黒猫の美徳は桐乃と沙織への友情なのでしょう。それが女の子のリアルなのかはよくわからないけれど、少なくとも俺妹本線はそういうものでした。黒猫if下巻でも沙織に「あなたと疎遠になるくらいなら、先輩と別れるわ」(p.45)はその黒猫の性格は引き継がれていますよ、というわかりやすいサインです。

黒猫は桐乃の恋心を知っていたことは、たとえば4巻で「ベルフェゴールの呪縛」を描いたところから明らかですよね。ちょっと脱線すると、そこで麻奈実が悪役になるのは、桐乃の微妙なブラコン程度だったろうものを、誰にも言ってはならない恋だと言語化して桐乃を呪縛している、と黒猫は訴えているという見方もできそうですが、ともあれそれは奇妙に二人に伝わらないわけで、黒猫は桐乃をあるがままに受け入れているわけですから、あやせに面と向かって桐乃が日本に帰れなくなったのは黒猫のせいだと責められると黒猫としてはもういたたまれなくなってしまう。

あやせの扱いがひどいという声もあるけど…まあ彼女の性格からすると一度そう言ってやらざるを得ないというのもまあ納得です。黒猫が二人きりの夏休みを過ごすためには桐乃がいたらそうはいかないし、そこで桐乃を思って思い余ってしまうあやせはぴったりだから。

そんなわけで運命の夜、千葉みなと花火は再現される。道程がものすごく違っていたけれど、黒猫の気持ちは本線8巻とほとんど変わりません。

本線では花火のあと、有馬温泉に着くまで、桐乃は黒猫と京介を応援するのだけれど、「桐乃の気持ちを知ってなお、あなたは私を選んでくれるの?」の問いに、そりゃ黒猫が卒倒するという演出はあるけれど、けっきょくは京介が引き延ばした答が12月だったわけです。黒猫if下巻の花火の夜も、桐乃のメッセージが出てきて、なお黒猫は身を退こうとする。「桐乃の気持ちを知ってなお、同じことを言ってくれるのかしら?」と。黒猫の気持ちが同じなんだから、前回の花火から有馬温泉までを早回しにしているわけです。

その答をひっくりかえそうとしたら、京介の積極性が必要で、だからこそ黒猫if上巻、犬槇島の花火の夜での告白は、黒猫からのをさえぎって京介からでなければならなかった。

そして、運命の夜の問い、ここで黒猫の手を離したらもう取り返しがつかないという確信をもって決然と進めるのは、「既視感」がカギになっているわけです。犬槇島の花火の夜にもリーディングシュタイナーが発動していましたが、「ここで彼女を行かせてはならない」、わかっているようです。

もうちょっと蛇足するとですね。京介が黒猫に惚れる決定的なきっかけがいまいちないという感想もあるんですが、それってやっぱりあの合宿の間なんですよね。麻奈実には「変わりすぎだよ。前に会ってから、ほんの少ししか経っていないのに……何年も経って、久しぶりに会ったみたい」といわれ、桐乃とは「あんた、黒猫のこと、好きだったの?」「好きになったんだ、この半年で。合宿で一緒に過ごして、もっと好きになった。」といっていて、やっぱり決定的なのは合宿だけれど特定のイベントじゃないと。

それは、悠がなにか不自然な小細工をしたとみることもできるかもしれないけれど、僕はまあそうまで言わなくてもいいんじゃないかな。お年頃の二人、これだけ一緒にいればということもあるし、新白猫にヒトメボレでもいいじゃんね。

えーと疲れたからこのへんにしますが、「…でなければならなかった」てえのは最上級の賛辞くらいにおもってください。ぜんぜんちがう二次創作はそれはそれで大歓迎です。

15日追記

桐乃に黒猫が克明に合宿のタイムラインを伝えるの謎ですよね。そこまでしなくてもいいのに、ブランクをみつけて、「あたしと沙織に言えないようなことでもしてたの」てツッコミを引き出すためだけなのか。そうじゃなくて、その直後に桐乃は「運命の記述」を描き始めるわけですから、悠の情報操作を感じ取って、あるいはもっと鋭い勘で、なすべきことを知ったのかな、とちょっと妄想しましたよ。

 

桐乃(何か書いてる)www.pixiv.net