映画ゆるキャン△(ネタバレあり)

一足お先に完成披露上映会(新宿ですよ!)に行きまして、その日にメモを書き殴ったのですがさすがにその夜にネタバレブログは遠慮して、7月1日上映後の週末が過ぎた頃合いですから、書き足して出します。

 

1.冒頭超名古屋フィーチャー

アバンのしまりん、題字出るところやOpが全部名古屋です。ゆるキャン△は1期が山梨・長野、2期は静岡県が中心でしたが、ついに愛知県まで進出したわけです。ついでになぜか志摩リンは一宮に住んでいます。事前情報から、近鉄沿線ではというイメージを持っていたのですが、まあ一宮のほうがいいんじゃないかな。

あとですね、BGM、2回観ただけでちゃんと聴けていませんが、繰り返される名古屋パートから山梨に来るとアコースティックになるんですよね。アウトドアから離れてしまった生活を志摩リンが代表しているわけですね。

 

2.これは大垣千明スピンオフ

日頃「めんどくさいので最初に出てくるやつが主人公」理論を唱えているのですが、アニメゆるキャン△は1期・映画でグルキャンから始まるので特定できなくなってしまいます。しいていえば名古屋人志摩リンが主人公と見せかけようとしているようでもありますが、なんかそう割り切れないものも感じます。

実質大垣千明主人公というと、大垣推しの度が過ぎるといわれるかもしれませんが、しかしこの物語、よくよく考えてみると傍目には

  • おそらく県の施設の跡地(おそらく県有地)の利用をめぐって
  • 県の外郭団体の職員、大垣千明が立てた企画のために
  • 元仲間たちが集まって応援、めでたくオープンを迎え、そしておそらく元の都会に散ってゆく(※→追記)

という話なので、冒頭に県庁で策をめぐらす千明から語りはじめるだけでじゅうぶん大垣千明主人公になる話です。

めんどくさいオタクが「5人の未来が確定してしまうのが嫌だ」と言っていた話がバズっていましたが、観てあまりそうも感じなかったのは、大垣千明スピンオフととらえられるからかな、と思いました。

 

3.大人だからできること

元来キャンプはカネのかかる趣味です。高校生では買える道具にも移動手段にも制約がありすぎて、実際にやろうとすればとっても大変なはずです。その制約がなくなった大人の5人がキャンプギアやキャンプ場のレビューをするなんて話のほうがあるいみ自然なキャンプ物語なのかもしれない、と最初思いながら見ていたのですが、なでしこが大人になっても何でもできるわけではないと袈裟懸けにぶった切ってきました。

なでりんがぶつかっていたのは、富士山登頂失敗といった大自然への挑戦でもなく、彼女らの仕事の行き詰まりでもなく、まあ大垣の仕事の行き詰まりなのかもしれないけど、もうちょっと社会的なものですね。

 

4.再生というテーマ

大垣が「ちょっとずつさびれている」と言い、しまりんがキャンプ場のコンセプトを「再生」に求めるのは、山梨県峡南地方の過疎化についてですね。高校生としては考えなくてもよいかもしれない社会の問題に、ついに真正面から取り上げたので、それは意外だとともに、よくやってくれたと思いました。

僕はわりと聖地巡礼ねっちりやるほうだと思うのですが、西宮北高校でも千葉商業高校でも実籾高校でもいいのですけど、現役で使われている学校には普通は立ち入りできないものなわけです。地域社会だってそんなに歓迎でもない。それがゆるキャン△の本栖高校のモデルが下部小中学校跡で、普段から玄関先まで入れてしまううえに、地元の方々が歓迎してくれてイベントまでやってくれる、それはゆるキャン△が大いに盛り上がるのに力があったと思うのですね。

でも、それって、単に廃校が使われていないからというだけじゃなくて、小中学校がなくなるような地区というのは30年もすれば誰も住まなくなるというカウントダウンが始まっていて、だからこそ(ほんとは移住してほしいのだろうけれど、せめて)訪れる人にも格別の歓迎をしてくれるわけですね。うれしいんだけれど、胸の奥底でちょっぴり申し訳ないなと思っていました。

今回、映画の事前情報で、昭島から名古屋までひととおり行ったわけですが、イヌ子の学校(劇中では鰍沢富士見小学校、実際には鰍沢中部小学校跡)に行ったとき、どんよりした曇りだっただけでなく、近くの交流センター塩の華(道の駅的な施設)まで閉鎖された直後で、なんとも侘しい感じがしました。それでもフィクションだから普通の学校にしちゃうんだろうな、と思っていたら、雨の閉校式を描いてくれました。それを予告する、鳥羽先生とイヌ子の会話で、おもわず涙ぐんでしまいました。

すいませんちょっとしめっぽくて。でもそれを乗り越えていくのは胸熱ですから、山梨のリアルをほどよくブレンドしたいい物語です。

まあその、そんなこと気にしないであっけらかんと見てもいいのだと思います。

とりあえず、興行収入がびっくりするくらい上がれば、ひょっとしてみんなの見たい高校生のみんなの活躍、たとえば大井川や瑞牆山がみられるかもしれません。とりあえず映画見に行こう!

追記:キャンプ場を作った5人組ですが、富士川町高下に毎日通えるのは千明しかいません(なでしこ・リン・恵那は都会から週末通い、イヌ子だって小学教師をやめていない)。よくキャンプをする僕としては、身近な現実として人手不足が気になるので、このあとの運営がどうなるのか気になってしまいます。完成披露上映会では疑問しかなかったのですが、7月1日封切り上映で謎が解けました。エンドロールみてください。千明、ちゃんと仕事しています。本編で千明が地元の人の協力を取り付けていたのは、ちゃんと伏線だったのです 。やっぱりよく考えています。