消毒用アルコールを燃料に使ったら発熱が少ないのか

ゆるキャン△クラスタで、消毒用アルコールが燃料に使えるかという話題がでてきました。消毒用アルコールは水などが混入されているのでそのぶん熱量がすくなくなるはずです。

今年は理科年表がゆるキャン△コラボなので、理科年表がキャンプの役に立つと無理やり示してみようということで計算してみましょう。

まずは組成から。健栄製薬によると消毒用エタノールIPは「エタノール76.9~81.4vol%を含有する。添加物としてイソプロパノール3.7vol%を含有する。」だそうです。
https://www.kenei-pharm.com/medical/products/2070/

エタノール割合がずいぶんとブレブレですが、まあ中間をとってざっくり 79%、イソプロパノール CH3CH(OH)CH3 の特性はよくわかりませんがまあエタノール CH3CH2OH よりちょっと重くて熱が多く出るくらいでしょうか、似たようなものと思うとエタノール 83% 水 17% の混合物と思っても大差ないでしょう。

この混合物 100 mL あたりのエタノールと水のモル数を知りたいとなると、比重ですね。インタビュー文書に15度比重 0.809~0.816 とありますからまあざっくり 100 mL あたり 81g ですね。あとは比例計算です。
エタノール
81 g × 83% ÷ 46 g/mol = 1.46 mol
水:
81 g × 17% ÷ 18 g/mol = 0.77 mol

エタノール 1.46 mol が燃えて水 0.77 mol が道連れで蒸発させられましたというと、エタノールの燃焼熱が 1368 kJ/mol, エタノールの蒸発熱が 38.6 kJ/mol, 水の蒸発熱が 44.0 kJ/mol だそうですから(このへん理科年表大活躍)、

1.46 mol × (1368 kJ/mol - 38.6 kJ/mol) - 0.77 mol × 44.0 kJ/mol = 1900 kJ

さてもともとの 100 mL = 81 g が全部エタノールだったとしたら、
81 g ÷ 46 g/mol × (1368 kJ/mol - 38.6 kJ/mol) = 2300 kJ

出てくるわけですから、2割も減りません。なんだかあんまり変わりませんね。

まあ、結論からいうと燃料としての特性はあんまり変わらないのではないかという気がします。水が混入しているぶんだけ水蒸気がちょっと多く出るかもしれないけれど、どうせエタノール CH3CH2OH だって H の数の半分だけ水蒸気 H2O が出てくるわけだから、燃料用アルコールだってなべ底に水滴はどのみちつくんですよね。

なお、水が入っていますから使用後乾燥せず放置するとスチールのアルストが錆びやすい等の問題はあるかもしれません。